Four Tethers〜絆〜
 リビングに入るなり、沙織はその場に倒れ込んでしまう。

「ホントに大丈夫かよ…水持ってくるから、そこで待ってな」

 そう言って立ち上がろうとした綾の腕を、沙織が掴んだ。

「どうした?」
「どんな気持ち…?」
「…え?」

 綾は聞き返す。

「私、最近、おかしいの…自分が自分じゃないみたい…」
「………」

 綾は黙って沙織の言葉を聞いている。

「最近…分かるの」

 沙織は、横になったまま両手で顔を塞いだ。

「目に見えないことが…頭の中に直接、浮かぶの…今日だって、行く先々に、いたでしょ…?」
「気付いてたのか…」

 綾は軽くため息をついた。
 わざと何もないように振る舞っていただけなのか。
 それでこんなになるまで飲んで…。
 全くしょうがねぇな、と綾は倒れている沙織の横に座った。

「綾は、こんな気持ちになったことある…?」
「…あるよ」

 目を伏せて、綾は答える。

「沙織の気持ち、よく分かる。だけど、あたしも悠も諒もいる…一人じゃないんだ」

 その言葉を聞いた時、沙織の目から涙がこぼれた。

「みんな、いるから…」

 もう一回、今度は自分にも言い聞かせるように綾は言う。
 しばらくそのまま動かない沙織。

「あ、あはっ…ごめんね、完全に酔っぱらいだわ」
「いいさ、たまには。これで悠達にみやげ話が一つ出来た♪」
「ちょっ…内緒にしてよ」
「どうしようかなー」
「あ〜の〜ね〜」

 沙織の“能力”が目覚めかけている。
 綾はそれを確信した。
 だが、沙織の能力は自分や悠や諒の力とは少し、違うもののような気がしてならなかった。

☆☆☆

 次の日。
 何とか起きれはしたものの、案の定二日酔い状態の二人。

「ぅえ。朝から酒臭い」
「何よ…お互い様…」

 そんなことを言い合いながら店を開ける。
 体調以外は、いつもと変わらない平凡な朝。
 …の、はずだった。
 カランコロン、と入り口のドアにかけてあるカウベルが鳴った。

「いらっしゃいませ」

 二日酔いを思わせないお決まりの営業用スマイルで、沙織は挨拶をする。
 ――だが。
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