夕焼け色の再会
「亜美は、帰ってこないの?」
結衣の揺らめく瞳にそう問いかけられたのは、彼女が帰る間際だった。
話したいことは山ほどある。
空白の八ヶ月を埋めるには、この数時間では到底足りなかった。
しかし、泊まっていかないかという私の言葉に、結衣は首を振った。
「明日も朝から練習があるから」
聞けば、今日は午後の練習を途中で抜け、このパーティーに来たらしい。
それもそうだ。
バスケ部に一日オフがあるのは、一年でもほんの数日。
半日でも休むことは、練習に真摯に取り組む結衣にとってはとても辛いことだったはず。
「今度はさ、あたしの家に来てよ。あたしが部活引退しないと時間は作れないからかなり先になっちゃうけど」
この家よりは小さいけど、と結衣は笑って付け加えた。
「今年俺たち18歳だから、そのときにはもう籍入れてるかもな」
「18歳になってすぐに結婚しなくてもいいでしょ? せめて高校卒業まで待ってよ」
「うちの親父が待ってくれると思うか?」
「あー、うん、無理そう」
羽島くんと結衣のそんな言葉の応酬を聞きながら、私は二人を玄関まで送っていった。
二人が乗って帰る車は、客人用の駐車場から長谷川家専用の駐車場まで移動してもらっておいた。
刻一刻と迫る別れの時を前に、寂しさが胸をよぎる。
見送りはここまでで、と言われたため、私はストールの端を押えて立ち止まる。
そのとき、振り向いた結衣に言われたのだ
「亜美は、帰ってこないの?」
と。