夕焼け色の再会
皇ヶ丘学園にだろうか、それとも東京に、だろうか。
問いの内容がどちらにしても、答えは同じだった。
返事の代わりに、一度だけ深く頷いた。
「どうして・・・・いや、ううん。ごめん。
そうだよね、忘れて」
胸の前でぎゅっと握った右手を、さらに左手で包こんだその仕草は、言いたいことを無理矢理飲み込んだように見える。
「もう、戻れないから、私は。
今の私の帰る場所は、ここじゃないの」
結衣やその他の手放した仲間たち、そして父の生まれ育ったこの家が大切でないはずがない。
しかし、私の今の居場所は、ここではない。
どちらがより大切かだなど選べるはずもないが、それだけは確かな事実。
「でも、結衣」
だけど、人の優しさに、甘えてみてもいいのかもしれない。
欲しいものはいつも、ひとつだとは限らない。
「辛いことがあったら頼ってもいい?結衣にしか言えないこと、たくさんあるから。
それで、結衣も、結衣も・・・・たまにでいいから、私のこと、思い出して・・・・っ」
乾いたはずの涙があふれ出し、けれども零れ落ちるよりも早く、私は結衣に抱きしめられた。
結衣の身に付けたドレスの夕焼け色が、涙の水玉に濃さを増す。
「思い出さないよ、だって、忘れることがないんだもん。いつでも、思ってるっ・・・・」
誰かの記憶の中に間借りするのではなく、ちゃんと存在していたい。
今もまだ夢を追う彼女に恥じない自分になりたいと、心から思った。