夕焼け色の再会
翌日、夕方の新幹線で帰る予定だった私は、少し早めに長谷川家を出た。
叔父は仕事のため朝別れを告げ、名残惜しそうな祖母と叔母とも、あえて駅までは見送ってもらわないことにした。
大袈裟に別れを惜しまなくても、また来てなど言われなくても、私はきっとまたここに来る。
いや、来たくなるだろう。
二人の穏やかな笑顔に見送られ、城のような長谷川家を後にした。
“長谷川亜美”から“高橋亜美”に戻る前に、行きたい場所があった。
外から少し眺められればいい。
それできっと、私の青春のすべてを捧げたあの場所を、もう悲しい思い出の溢れる場所だとは思わなくなるだろう。
そこではまだ、私の大切な人たちが精一杯夢を追いかけているのだから。
汚してしまった自分自身の誇りを取り戻すことはできなくても、かつてそこではたしかに、ひたむきだった私がいた。
高いコンクリート塀に囲われ、要塞のような重厚な門に守られたここは、皇ヶ丘学園。
幼稚舎から大学院までが同敷地内にあり、中のすべてを回るには一週間以上かかると言われるほどその敷地は広大である。