夕焼け色の再会

目を閉じて、ゆっくりと思い出す。


この門をくぐると長い一本道がある。

道の両脇は木々が生い茂る森のようになっており、ここが都内とは思えないようなその森の深さに、端まで辿りつけた人間はいないとさえ言われている。

遅刻しそうな生徒泣かせのその道が分岐する地点には、皇ヶ丘学園の誇りである大噴水がある。

その傍らには、伝承に登場する、天下を治めた剛健な丈夫の石像。

皇ヶ丘学園の名前は、その丈夫に由来するとされている。



“皇”の文字は、いわゆる天皇を表すのではない。

天子、つまり天下を治める者の意味である。



ここは遥か昔、丘陵地だったそうだ。

その頃天下を治めていたかの丈夫は、病で床に臥すことになる。

迫りくる死を覚悟した彼は、ただひとつだけ遂げられなかった想いを悔やみ、その拳で地を叩いた。

そして彼は、儚くなった。


彼が最期を迎えたその場所は、拳の強さに地が没したのだそうだ。

それがこの石像の立つ場所だとされている。

そしてそこにつくられたこの学校は“皇ヶ丘”という名になった。



丈夫の遂げられなかった想いが何であるのかはわかっていない。

しかし、剛健な丈夫さえ遂げられずに悔やむ想いがあるのだから、その姿から学び、やり残すことのないようこの学園での生活を送るようにと、皇ヶ丘学園に入る者は誓わされるのだ。


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