夕焼け色の再会
「すみません、車を停めてください」
かしこまりました、という言葉とともに減速し、やがて路肩に停車した。
「気分が悪くて・・・・。すみません」
嘘ではない。
胸の奥がざわめき、落ち着かないのは本当だ。
「病院へ向かいましょうか」
それには首を振って答えた。
「いえ、大丈夫です」
俯いて膝の上に置いた手をかたく握りしめて、必死に感情を抑え込もうとしてみた。
前までは、あんなに簡単にできたのに。
どうして今の私は、そんなことができなくなっているのだろう。
微笑んで、適当なことを言っていれば、大抵のことはうまくやり過ごせていたのに。
きっと今回もそうしていれば、何事もなくまた家に帰ることができるのに。
“長谷川家のお嬢様”から、ただの“高橋亜美”へ戻れるのに。
どうしてそれができないのか。