夕焼け色の再会
「それにしても、よくここを見つけられたね」
「・・・すみません。勝手に入って」
「いや、ここはきみの家も同然だから、好きに過ごしてくれていいんだよ」
その言葉だけで、居場所ができた気になれるならどんなに幸せだろう。
どう図々しく肯定的に考えれば、私の今までの状況でそんな幸福な考えに辿りつけるのだろう。
ただ、そう考えることができていたなら、きっと私はもっと・・・・。
そう考えている時点で、私は私でしかないのだけれど。
「これも運命かな」
なにが、と訊く前に、次の言葉が被せられた。
「ここは兄さんが家の中で一番気に入っていた場所だよ」
その瞬間、窓から射す光の中に父の幻影を見た気がした。
「花の名前なんかひとつも知らないような人だったのに、ここにいると落ち着くって言っていたな。なかなかわたしも入れてもらえなかった。昔のままでもう古くなっているけど、ここだけは建て替えずにそのままにしてあるんだ」
長谷川家は、住居となる建物を15年ほど前に建て替えたらしい。
今ではここだけが、いつかの父の存在を証明するものになってしまった。