夕焼け色の再会
そのとき叔父に連絡先を渡されていたものの、その番号に電話をする気などなかった。
父が有名企業を統括する一族の人間だったとしても、そんな後ろ盾は私にとってはなんの価値もない。
他のすべてが満たされていても、本当に欲しいものを手にしない限り、私は飢えつづけるのだと知っていたから。
けれど私はその一ヶ月後には、電話越しに叔父の声を聞いていた。
確認したいことがあったから。
父の葬儀の参列者の中に、ある人物が含まれているかどうかを。
やむを得なかった。
叔父に訊くしかなかった。
そう言い訳をするのは簡単なことだった。
けれど――つまり、私はそれでなくても叔父の声が聴きたかったのだ。
父によく似た、その声を。
もうどうやっても本物の父の声を聴くことはできないのだから、それくらい願うことは贅沢ではないはずだ。