夕焼け色の再会

松野さんの運転する車に乗り込み、着いたのは星付きのグランメゾンだった。

モダンでありながら歴史を感じさせる豪華な外観に圧倒されかけたけれど、今の私は“私”を演じている“私”なのだ。


こんな場所には慣れている、特別扱いはいつものこと。


そう見えるように余裕の笑みを浮かべて入口にある数段の階段を上っていると、慣れない高いヒールで足元がぐらついたけれど、そんなことは感じさせないように笑顔は崩さなかった。



個室に通され、引かれた椅子に腰かける。

さすがに細かい作法はすぐには思い出せなかったから、とりあえず叔母の真似をしてやり過ごした。


叔母も由緒正しい家系に生まれ育ち、長谷川家に嫁いできたのだ。

生まれたときから食事のマナーなど、身体に染みつくほど教えられているはずだ。

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