夕焼け色の再会
愛でられて、なお
翌朝、目を覚ました私はぼんやりとする頭で、ここが東京の長谷川家だということを思い出していた。
広すぎるベッドに、頭が埋まるような大きくて柔らかい枕、羽根のように軽く、けれどあたたかい上掛け。
私には似合わないような可愛らしい寝具を脱いで、大きく伸びをした。
今日は、祖母や叔母と永野屋百貨店に買い物に行く予定だ。
裸足で床に降り立ち、ルームシューズを履かないままクローゼットまで歩く。
冴えない頭のままでその扉を開けて服を選ぶ。
ニット、ブラウス、ワンピース、スカート・・・・素材も色も柄もさまざまで、しかしそこに共通しているのは品の良さだと思う。
どれも私の好みに合ったデザインだったけれど、指先で触れただけで上質とわかる生地に、私がいつも身につけているような服とは桁が違うだろうと容易にわかった。
私が選んだのは、ペールピンクのニット、白いレースのスカート。
スカートのレースは花をモチーフにしていて、一目で気に入ってしまった。
出掛けるときはベージュのブーツを履いて、ラメの織り込まれたツイードのチェーンバッグを持とう。
そう決めて、カーテンを勢いよく開けた。