夕焼け色の再会

祖母、叔母、そして私が、例の黒塗りの高級車で永野屋百貨店本店に到着したのは、それから3時間後のことだった。


一般車とは駐車場からして違い、車を降りたらすぐに特別顧客用のエントランス、そこから敷かれた絨毯の上を歩き、私たちは豪奢な一室へと案内された。

サロンと呼ばれるこの部屋は、選ばれたVIPが買い物をする際に、利用するのだという。

買い物とはいうものの、まずはソファへの着席を促され、優雅にお茶を楽しむところから始まったのだけれど。


長谷川家の外商担当の女性は、黒いスーツで髪をきれいにまとめていて、いかにも仕事ができそうな風貌だった。

外商とは本来、顧客の家へ訪問して商品を販売することを指す。

いつもはそうしているらしいのだけれど、今回は私の服を選びたいということで、直接永野屋まで来たのだ。

長谷川ほどの家の人間が、わざわざ一般客と同じように出向いて買い物をするはずなどないと思っていたけれど、まさかこのような特別待遇があるなんて知らなかった。



「お嬢様とお会いする機会をいただけて光栄です」


担当者の隙のない接客用笑顔に、私も完璧な微笑みを返した。


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