夕焼け色の再会
「亜美さんはもう高校三年生なのよね」
夕食の席で、祖母がそう言った。
今日は長谷川家お抱えの料理人の和食だ。
「はい、まだやっと17歳になったばかりですが」
早生まれの私の誕生日は、ほんの十日ほど前でしかない。
「卒業後のことは決めているの? 亜美さんは優秀だから、皇ヶ丘学園の大学にも通えるんじゃないかしら。それだったらぜひこの家から通うといいんじゃない」
「母さん、大学生になったらそれなりに遊びたいだろうし、こんな窮屈な家は嫌だと思うよ」
「あら、そうかしら。でも大学生の女の子の一人暮らしは危ないわ。最近物騒な事件が立てつづけにあるし」
祖母と叔父は二人で私の今後について勝手に話し合っている。
揚げ出し豆腐を咀嚼しながら、黙って話の行方を見守っているが、私はそもそも皇ヶ丘学園大学を受験するつもりはない。
エスカレーターで進学する生徒も多いため、万一顔を合わせたら気まずいことこの上ない。
ただでさえ教室に馴染めていなかったのに、高校2年の夏休み明けに何も言わずに突然姿を消したのだ。
変に勘ぐられたくはない。