夕焼け色の再会
「編み物は初めてなの?」
「小学生の頃、母に教えてもらってマフラーを編んだことがあるんですけど、固くなってしまって巻けるようなものではなくて。
父にあげるために編んだんですが、ありがとうの一言も、嬉しそうな顔もしてくれなかったのを覚えています」
感情が表に出にくかった父は、表情も豊かではなかった。
それでも、そんな父が好きだった。
「あら、それはきっとお義兄さまは照れていたのよ」
「そうだと思いたいです。毛糸が切れてほどけるまで、毎日使ってくれていたので」
自分でドイリーが編めるようになったら、両親と三人の写真を入れている写真立ての下に敷こう。
両親がいなくても、すこしずつ重ねられていく思い出。
私は今ここに生きていて、確かに自分の足で立って歩いている。
もしも自力で立てなくなっても、支えてくれる人はきっといる。
私さえ、拒まなければ。