夕焼け色の再会
やはりここは、限られた人間しか入ることのできない世界。
小さく閉ざされた世界だからこそ、運の悪い巡り合わせもあるのだ。
「これは、お久しぶりです、長谷川社長」
「羽島専務、ご出席いただきましてありがとうございます。会長や社長はお元気でしょうか」
恰幅のいい壮年の男性と叔父が、言葉を交わしている。
叔父の表情からして、きっとこの人は信頼に値する人間なのだろうと確信する。
促されて私も挨拶をした。
「長谷川亜美と申します」
「わたしの姪でしてね。こういた場は初めてなものですから緊張しておりまして」
叔父が補足をしてくれる。
「先ほどから、連れている綺麗な人は誰かと思っていましたよ。わたしの愚息も紹介いたします。総司! ご挨拶を」
羽島という男性はそう言って、少し離れたところにいた男性を呼んだ。
羽島、総司。
何となく聞き覚えがある。
途端に、嫌な汗が噴き出てくる。
一瞬のうちに記憶の糸を必死に手繰り寄せ、そして思い出した。
皇ヶ丘学園男子バスケットボール部、羽島総司。
きっと彼は、皇ヶ丘学園時代の私のことを知っている。
夏休みの間に突如私が学校から消えたことが、変な噂になっていたらどうしよう。
私が長谷川家の一員だということが知れ渡り、さらに両親のことが公になったら迷惑をかけてしまうかもしれない。
危険信号が点滅したが、逃げることはできなかった。