夕焼け色の再会

「俺のこと覚えてる? 同じバスケ部で、しかも中等部の一、二年生の頃同じ特待クラスだったんだけど」


そうだ、思い出した。


羽島総司は有名企業の御曹司であり、幼稚舎から皇ヶ丘学園に通っていながら、中等部からはスポーツ特待クラスにコース替えをしたのだ。

しかしバスケだけでなく勉学の才もあった彼は、中等部三年からは再びコースを替え、特進クラスに入ったのだ。

皇ヶ丘学園の特進クラスといえば、難関大学入学を目指す精鋭中の精鋭であり、どれだけ寄付金をはずんでも一定の学力レベルに達していなければ入ることはできないのだ。


中等部から皇ヶ丘学園に入った私は、とくかく部活に夢中だったためクラスでの出来事や行事などの記憶がほとんど残っていない。

誰がいつ同じクラスだったかなど、同じ女子バスケットボール部の仲間くらいしか覚えていないのだ。



「それは、もちろん覚えています・・・・」

「長谷川さんがまさかこの長谷川グループの人だったなんて驚いたよ。そんな話、今まで一度も聞かなかったし、学校のうわさ好きな連中でさえも掴んでなかったネタだな」


明るく好意的に話す彼だけれど、もしかしたらこれは私を脅そうとしているのだろうか。

彼の人間性についてなにひとつ記憶している部分がないため、判断することができない。

しかし、多くを語ってしまえば綻びがでてしまうこともわかっていた。

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