夕焼け色の再会
「それは、公にはしていないことなので皇ヶ丘の方たちには・・・」
こんな口止めがなんの役に立つのかわからないけれど、彼の口が軽くないことを祈るしかない。
「ああ、秘密にしたいなら言わないけど。
そういえば長谷川さん、二学期から姿を見ないなと思ってたら転校したって聞いたけど、まさかうちの学校やめて藤城に編入したの? そんなにうちの学校、居づらかった?」
居づらい、というのは、もともと特待生として皇ヶ丘に入った私が膝の怪我でバスケができなくなり、特待生としての地位を失ったことを意味しているのだろう。
けれど、うかつに喋ってしまえばそれこそ危ない話題だ。
「ごめんなさい。その話もちょっと・・・。
あの、以前の習い事の先生がいらしているので、ご挨拶に行ってきます。このあとも楽しんでいってください」
下手な嘘をつき、その場を離れて人にまぎれる。
習い事などしていなかった私に、挨拶をすべき人間がいるはずもない。
どう考えても対応を間違えてしまったと、苦い気持ちで彷徨い歩いていた。