夕焼け色の再会

その男性と目が合い、思わずそらす。

いくら何でも、あの車が私の迎えのはずがない。

ああいう運転手つきの車に乗っているのは、それなりの立場がある人だ。


見なかったことにしよう。


けれど私の予想を裏切って、その男性は私に近づいてきて。


「亜美お嬢様でいらっしゃいますね。お迎えに上がりました。お乗りください」


と、車に案内して恭しくドアを開けてくれた。




後部座席は広々としていて、なめらかな革のシートが張られていた。

まるで造りの雑な機械のようにぎこちなく歩いて車に乗り込み、運転席の後ろに座ったけれど、なんとなく居心地が悪くて何度も姿勢を変える。


こんな風に扱われたことはない。

私が長谷川家の人間であることは確かな事実だけれど、つい数ヶ月前まではそんなことを少しも知らずに生きていたのだ。

いきなり高貴な人間のように迎えられても、戸惑いばかりが生まれる。

< 9 / 119 >

この作品をシェア

pagetop