夕焼け色の再会
夕焼け色の再会
「行きましょう、亜美さん」
どこへ、と問う声は驚きで塞がった喉の奥に押し込められ、出てくることはなかった。
その強い瞳で私を促す彼女の意思を、無視することなどできるはずもない。
歩を進めようとした私を、甲高く刺々しい声が引き留める。
「なっ・・・ちょっと待ちなさい! あんた誰よ? あたしを侮辱するなんて、どうなるかわかってやってるの!?」
「そうよ! あたしたちが誰だか知ってるわけ? 庶民崩れが大きな顔しないでよ!」
先ほどまでの優雅な言葉遣いではない。
叫ぶように大きな声を出されたため、さすがに周囲も異変に気がつきはじめてしまった。
先を行こうとした結衣は、三歩目を踏み出したところで止まり、喚き散らす二人を振り返る。
「あなたたちは、萩野と御船の方よね? 父に進言しておきます、この二家には品も教養もない恥知らずがいると。人ってそうやって家の名に泥を塗るのね、勉強になったわ。
私は村瀬結衣と申します。この名を聞いてもわからないなら、」
恥に加えて世間も知らないのね、と笑みを残した結衣に手を引かれて私はその場を後にした。
結衣の半歩後ろを歩きながら、八ヶ月前と変わらない友人の背を見つめた。
結衣はどうしてここにいるのだろう。
一緒にいた頃、彼女がどのような家柄かなどには興味がなかったから、騒ぐ赤と青のドレスの女性たちを黙らせるほどの力があることに驚いた。
そしてこの再会を、素直に喜べずにいる自分に気がつき、確実にあの頃とは変わってしまった自分たちに、心で涙を流した。