夕焼け色の再会
会場となっていた別館の大広間を出て、結衣は辺りを見回す。
階上へと続く階段の脇にあるソファに目を留めると、そこまで私の手を引いていき、座るように目で促した。
出会った頃から、結衣の瞳の強さがいつも眩しかった。
彼女が大切な人だという事実はあの頃から変わっていない。
けれど、瞳の強さをそのままに、すべて捨てて、置き去りにして逃げだしたあの日のことを責められたらと思うと、怖くて視線を交わらせることは躊躇われた。
俯く私の肩を、温かい結衣の手がしっかりと掴んだ。
「亜美、ねえ・・・・本当に亜美なの?」
想いが溢れだしそうになるのをぐっと堪え、頷いた。
「亜美・・・・・、ずっと、ずっと会いたかった・・・・っ!」
抱きしめられると、結衣の肩口に顔が埋まる形となり、懐かしい彼女の匂いに包まれた。
そしてこれが現実だと、やっと認めることができた。
結衣を抱きしめ返すべきか、その資格が自分のあるのか迷って手を出せずにいたが、その息遣いが乱れて彼女が泣いていることに気づくと、自然と私の手は彼女の背をさすっていた。
けれど、私の唇が漏らした言葉は。
「結衣、ごめんね」
空白の過去を埋める言葉でも、再会を喜ぶ言葉でもなく、謝罪だった。