恋心 ~Opposite Nature~



気が付くと、みんなの視線は先生から俺と山中へと移されていた。

…ちっ。屋上にでも行く、か。


「おい、山地!!どこ行くんだ?始業式始まるんだぞ?おい!!」


担任の声は聞こえてきたが、教室に戻るつもりはなかった。



ギッといつも開いている屋上の扉を開けて、誰も居ないのを確認する。

…ここが一番落ち着く。

そう思いながら、フェンスに凭れ掛かった。

そして、ふとあいつの顔が頭を過ぎった。
---山中、妃路。

どっかで聞いた事のある名前だと思ったら、やっぱりあいつだ。

去年の体育祭で目立っていた女。…そして、いつも色んな男が噂していた。

可愛いだとか、好きだとか。

そんなこと俺にはどうでもいいんだけど、なぜかどうしてもあいつの顔が頭から離れない。

俺が手を振り払った時のあの、驚き悲しみの混じった顔が…。

まあ、すぐに忘れるさ。

ふーっと息を吐き出し、始業式を終えた教室に向かった。





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