天空のエトランゼ〜雷鳴轟く時〜
「くっ!」

剣を振るったのは、ティアナであった。

防御壁に鳴り響くサイレンを聞いて、急いで越えて来たのだ。

「しかし、貴様だけに構っている暇はない」

六本の腕で、ティアナの剣を跳ね返すと、雀蜂の魔物は針を神殿に向かって走る人々に発射した。

「チッ!」

ティアナの目に、生まれたばかりの赤ん坊を抱いて逃げる母親の姿が、映る。

(間に合え!)

ティアナの姿が消えた。

次の瞬間、放たれた無数の針が地上に叩き落とされていた。

そして、激しく息をして、逃げる女子供を背にして立つティアナがいた。

「今の力…魔法ではないな」

雀蜂の魔物は、じっとティアナを見つめ、

「面白い」

羽を広げた。

「ドキシ様!」

空中にいた烏天狗達が、ティアナの頭上に集まった。

「邪魔をするな。お前達は、神殿を破壊しろ。そして、例のものを奪うのだ」

「は!」

雀蜂の魔物の命令に、烏天狗達は女子供の後を追う。

「させるか!」

追撃しょうと振り返ったティアナの目に、雀蜂の魔物が映った。

「!?」

「驚くことはない。私もスピードには自信があるのだよ」

「くそ」

剣を両手で持ち、構えたティアナに、雀蜂の魔物は言った。

「我が名は、空の騎士団師団ドキシ」

「ティアナ・アートウッド」

ティアナも名乗った。

ドキシは笑みをつくり、

「ティアナ・アートウッドよ。残り数秒の命を大切にしなさい」

羽を震わすと、姿が消えた。

「チッ!」

ティアナの姿も消えた。

普通の人間では、目に見えない程の速さで、2人は激突した。



「けけけ!」

その頃、広場に入り、神殿のそばまで来た女子供を追っていた烏天狗達は、空中で壁にぶつかった。

結界である。

「な、生意気な」

烏天狗達は、鎌を見えない壁に叩きつけたが、割れることはなかった。

神殿の回りに、反対側から逃げていた人々も続々と集まってきた。

「女子供は、中に入るのじゃ!」

白髭を腰まで生やした長老が、集まった人々に指示を与えた。
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