ママのエプロン
美咲は迷うことなく

沙織の墓に向かう。



まるで

何かに導かれるように…



3人は

まだ4才の美咲の

その後ろ姿に、

驚いた。



「美咲ちゃん覚えてるの
かしら?」



義母の言葉に

祐二は首を傾げた。



「どうなんですかね?
もしかしたら
沙織が呼んでいる
のかもしれませんね…」



けっきょく美咲は

一度も足を止めることなく、

沙織の墓前に立った。



「ママー。
みんなきたよぉ」



美咲は

墓石に近づき、

そっと触れた…



3人はその後ろで

手を合わせた。



「さぁさぁ、
みんなでキレイに
してあげましょうねぇ」



義母の声を合図に、

4人はちり一つ

残さぬよう、

綺麗に清掃した。



容赦なく照りつける

太陽を見上げ、

額の汗を拭う祐二。



「パパー」



腰を落とすと

美咲は祐二の汗を

拭いた。



「沙織…」



祐二の眼には

一瞬、美咲が沙織に

映った。



「パパ?」



不思議そうに首を

傾げる美咲を

裕二は抱き上げた。



「ありがとう美咲ー。
ママと一緒で
優しい子だぁ」



沙織…
俺たちの子は、
こんなにもいい子に
育ってるよ…



裕二は沙織に向かって、

そう心で呼びかけた。



「もうこれぐらいで
いいんじゃないか?」



「そうですね」



義父の言葉に

返事を返した裕二は、

もう一度墓前で

手を合わせた…
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