感情1000円
喜び
「葉月、楽になるから。」
「‥いや‥やめて‥。」
母があたしに包丁を向けている。力無く不気味に笑う母。
震えが止まらないあたしは身動きも取れず、
押し入れに追い詰められた。
「‥助けて‥‥」
「あんたなんか誰も助けたりなんかしないわよ。」
馬鹿な子と言いながら、あたしの目の前に立った。
殺される‥っ。
目をつむった時、玄関が勢いよく開く音がした。
「‥何やってんだよ!!」
叔父さんがお母さんの包丁を落とし、抱え込む。
「‥あの子さえいなければ!わたしは幸せだったのに!」
鋭くあたしを睨む母。
涙なんてのは、こういう時に限って出ない物だ。
悲しすぎて、頭がついていってないんだろうか。
空っぽになったように、
あたしは頭が真っ白になった。