複雑家庭〜私は今日も、幸せです〜【完】
覚悟を決め、俺は校長である義父親の前に立って一連した。



「―――答辞桜が蕾を付け始めた温かい日和…」



堅苦しいが、樹に書いて貰った答辞。

ちゃんと読みたかった。

読みたかったけど、言葉に詰まった。



「卒業生199…」



人数が、違う。

…違うだろ…。



「優太、どうした…」



ざわつく体育館。

義父親が、小声で俺に問う。



「……この答辞を、俺には読めません」



義父親は「何を言ってるんだ!」と、俺に諭す。

けど、読めないモノは読めないんだ。

俺は校長に頭を下げ、振り返った。
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