カケラ
お洒落なテラスで、沈黙で向き合う男女が、周りの目には、どう映るのだろう。

そんなことをぼんやりと思いながら、頼んでいたアイスココアに目を落とす。

少し汗をかいたグラスをそっと包むようにして
『ごめんなさい』
と呟いた。

自分でも謝りの言葉を口にした真意は、よく分からないけれど、とにかくこの場の空気をなんとかしなければと思った。

『なぜ謝るの?』

顔を上げると、さっきよりも表情を柔らかくしていた瀧史に、心臓を掴まれたような感覚でいた。

『千里さん』


ガタッと音を立てて、飛ぶようにびっくりした私を瀧史は笑った。
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