Thus, again <短>
僕が少女に出逢ったのは、ただの偶然だったと思う。
たまたまの出逢いを“運命”と名付けてしまうのは、あまりにもこじつけだ。
けれど、その少女に惹かれたのは、確かな必然だった。
あの時の僕は、悲しい心を持った少女に、深く共鳴したのだ。
幼い女の子は、酷く乾いた心で、何かを欲しているのに、
何も手に入らない諦観の瞳で、世界を映していた。
寂しさと諦めを孕んだ、不安定な少女に、僕は手を伸ばした。
救ってやりたい、だとか、そんな大それたことを考えていたわけではなかった。
ただ、本能とも言える安易な衝動が、僕をそうさせたのだ。
この時、少女のこの世で生きた時間は、僕がこの町を出てから生きてきた年月にも及んでいなかった。
そして僕の方もまた、学校へ行くことすらも国をあげての義務にされてしまうような、たった14歳だった。
それでも僕はもう、何もかもできる大人になった気でいた。
親には、親らしいことをしてもらった記憶も、子どもらしい愛情を受けた記憶も、
ここ数年の自分の中には、何処にも見当たらなかったから。