Thus, again <短>
独りぼっちの少女は、いつも乱雑に散らかった薄暗い部屋で、お腹を空かせていた。
世界に怯え、救いの手を待ち焦がれ、誇り臭い部屋の片隅で、
その小さな身体を、よりいっそう小さく畳んでドアを眺めていた。
そうやって、この寂しい女の子は、毎日学校帰りの僕を待っていたのだ。
この時、少女の小さな世界を照らす光は、僕だけであったと思う。
そして僕自身も、そんな少女の希望になりたいと願い、
愛情と憐れみと共感を含んだ、青くさい使命感に燃えていた。
生まれて初めてともいえる、僕の中に芽生えた、本気だった。
消えかけた心に灯る、儚げな炎を、守ってやりたかった。
僕にとってもまた、少女は唯一の光だったのかもしれない。
ただ、少女と僕の間には、取り繕えないほどの決定的な違いがあった。
少女の心には、誰もが目を伏せたくなるような、深く鋭く、大きな傷があったのだ。
僕は自らの意思で、自分の感情を殺していった。
誰に傷付けられたのでもない。
言ってしまえば、周囲の大人への、くだらない反抗に過ぎなかったように思える。
しかし、少女は違う。
無邪気に笑ってさえいれば、無条件の愛を目一杯貰えるような歳に、それを許されなかったのだ。
守ってもらえるはずの親に、傷を負わされる痛みと悲しみは、
経験のない僕には、一生想像でしか、理解することはできない。