Thus, again <短>
だから僕は、そんな恐怖から逃げることを選んだのだ。
少女と過ごす時間以外のほとんど全てを、参考書に向き合うことに費やした僕は、
地元どころではなく、日本中に名の通る大学への進学を決めた。
この町から離れることを、自分自身で納得できる言い訳のために。
僕はこの町から逃げたかったのだ。
少女から。
少女に依存する、恐ろしい自分から。
このままでは、僕も少女も駄目になる。
僕たちがいる場所は、底なし沼だ。
漠然とした未来に見える、漠然とした恐怖が、余計に僕を怯えさせた。
けれど、いつか必ず、少女を自分一人で守れるようになって、迎えにいくという想いもあった。
そのために、力を付けなければならない。
駆け足で大人になって、早く君を迎えに来よう。
自分の手で、少女を幸せにしてやるんだ――
少女からの逃亡と、少女との未来のための一歩。
相反する矛盾した想いが呼応して、皮肉にも僕を一本の道に導いた。