Thus, again <短>
少女の心を振り払って、僕は町を出た。
最後に少女から手渡された、安っぽい腕時計を腕に連れて。
それは、少女が最後に示した“忘れないで”という精一杯のサインだった。
ここ数年の間に、金とほとんど同義語になっている親が用意してくれた新幹線の切符を破り捨て、
生まれて初めて、ほんの数日間のバイトで自分が稼いだ金を使って、一番安い夜行バスの切符を買った。
それは、住む場所も、学ぶ場所へと通う権利も、全て親の財布に甘んじている僕の、
ささやかで、無駄でしかない抵抗だったのかもしれないけれど。
ほんの少しだけ、大人になれた気がした。
少女の笑顔も涙も振り払い、背を向けた日。
僕は、その日確かに
大人への道を踏み出した――