Thus, again <短>



貸切の居酒屋の中のあちらこちらで、甲高い笑い声と、いつもよりひとつ高い社員の声が飛び交う。


入社2週間で緊張気味だった新入社員たちも、すっかり肩の力を落とし

酒の力を存分に借りて、先輩社員たちの輪に混じっていた。


何百倍もの競争率を勝ち抜いてきたとはいえ、会社を一歩出てしまえば

新入社員は、まだまだ学生気分の抜けないままだ。



何気なく辺りを見渡してみると、まだ見覚えのない顔がチラホラ見られる。


新入社員の人選は、他に任せてある。

人と関わらない人生を歩んできた僕には、どうも他人を見る目も欠落していた。



「ねぇねぇ、朝倉ちゃんはどんな人がタイプなのー?」


ざわついた個室の中でも、ひと際よく通る声が耳に届く。

少し離れたところで、新入社員の女の子が、すっかり出来上がったベテラン社員に絡まれていた。



ベテランといっても、会社自体が設立してからまだ若い。

皆、自分とさほど変わらない年齢の奴らばかりだ。



捕まってしまった新入社員は、先輩をうまく交わすことができず、

明らかに困惑と迷惑を浮かべた愛想笑いで、その場を凌ごうとしていた。


うちの会社の社員は、確かに仕事はできるのだが、何故だか酒が入ると癖が悪い奴が多い。



「俺はねぇ、朝倉ちゃんみたいな子、ちょーーーータイプだよ!」


酒のテンションに任せて、相手の空気を無視する愚かな男を、

俺は、冷めた目で一瞥してから、静かにグラスを口に運んだ。

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