Thus, again <短>
「ったく。相変わらずアイツは酒癖が悪いな」
いつのまにか隣に座っていた相棒、佐倉が、明らかな呆れを含んだ声で呟く。
「あの子、俺の今年のイチオシなんだよねー。アイツのセクハラで辞められたら困るんだけどな」
社員選びは、この男に一任している。
僕とは正反対で、社交的で、学生時代からいつも人の輪の中心にいるような、頼もしい相棒だ。
一見、真逆の二人だからこそ、衝突することもなく、互いを補い合って
こうして何年間も、うまくやっていけているのかもしれない。
「大丈夫だろ。お前が選んだ奴なら、あれくらいでそう簡単にやめるほど、ヤワじゃない」
「まぁね。先を見抜く商才はないけど、人を見る目だけは割と自信あるしね」
わかりやすい表情を出すのが苦手は僕は、肯定の意味を込めて、少しばかり唇の端を吊り上げた。
「ま、ビジネスの方はお前に任せとけば安泰だよな」
佐倉の言葉に、僕はまた少し笑ってみせた。
心の内を見透かしたような、不敵な笑みを浮かべるイマイチ食えない男を、僕は誰よりも信用している。