Thus, again <短>



「ったく。相変わらずアイツは酒癖が悪いな」


いつのまにか隣に座っていた相棒、佐倉が、明らかな呆れを含んだ声で呟く。



「あの子、俺の今年のイチオシなんだよねー。アイツのセクハラで辞められたら困るんだけどな」


社員選びは、この男に一任している。

僕とは正反対で、社交的で、学生時代からいつも人の輪の中心にいるような、頼もしい相棒だ。


一見、真逆の二人だからこそ、衝突することもなく、互いを補い合って

こうして何年間も、うまくやっていけているのかもしれない。



「大丈夫だろ。お前が選んだ奴なら、あれくらいでそう簡単にやめるほど、ヤワじゃない」

「まぁね。先を見抜く商才はないけど、人を見る目だけは割と自信あるしね」


わかりやすい表情を出すのが苦手は僕は、肯定の意味を込めて、少しばかり唇の端を吊り上げた。



「ま、ビジネスの方はお前に任せとけば安泰だよな」


佐倉の言葉に、僕はまた少し笑ってみせた。


心の内を見透かしたような、不敵な笑みを浮かべるイマイチ食えない男を、僕は誰よりも信用している。

< 29 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop