Thus, again <短>
「あの子、大人しそうにしてるけど、絶対芯は強いよ」
佐倉は、酒のグラスに手をかけながら、イチオシの新入社員を見遣ると、得意気に笑ってみせた。
「ねぇ、朝倉ちゃんはどんな人がタイプなのー?」
あちらではまだ、懲りもせずに、饒舌になったベテランと新入社員の攻防が響いている。
「そうですね。私を守ってくれる人、かな」
「えー、俺守るよー」
「あと仕事のできる人」
「なんだぁ。やっぱそれって俺のことじゃんー」
「それから、お酒に呑まれず、必要以上に喋らない人、ですかね」
「……」
ざわめきの中から微かに聞き取れた、相手を一瞬で黙らせてしまった一撃と同時に
彼女はさり気なく、けれど明らかに、僕へと挑発的な視線を投げかけてきた。
彼女の強気な発言にぎょっとして、つい彼女の方に視線を向けてしまった僕は、
はからずも彼女と視線を重ね、そして何故だか反射的に逸らしてしまった。
「あはは。あの子言うね~。しかも、ちゃっかりお前のこと狙ってんじゃん」
その会話が、隣の佐倉にも聞こえていたのか、嬉しそうな声で茶化す。
「……まさか」
「いやいや。あの子は、それくらいの野心がある子だと思ってたよ。やっぱ俺の見る目は間違ってなかったわ」
一人で盛り上がる同志に、返す言葉を考えるのも億劫になり、僕は口の中に、強めの酒を流し込んだ。