Thus, again <短>
「しゃちょぉ~。こんなとこでコソコソ呑んでないで、一緒に盛り上がりましょうよー」
絶え間なく誰かが流動している、広い個室の中で、いつのまにか僕の隣には、また新しい奴が現れていた。
面倒臭さだけしか感じられない僕は、聞こえないフリをして、またグラスを口に運ぶ。
「も~社長ったらぁ。相変わらずクール!かっこいいー!」
……残念。
酒が入ると空気がわからなくなる奴が、ここにも一人いた。
僕は、グラスの中が白く濁るほどの、強いため息を零した。
他人事だと、好奇だけを孕んだ笑みで、僕を見るこの隣の男は、
仕事をできる奴を見抜くのは一流なのだが、どうも、酒癖の悪い奴を見抜く力はないらしい。
「ねーねー、社長は本当に恋人いないんですかー?」
「あぁ」
「なんでー。モテるのにもったいないですよー。ま、女に興味ないってスタンスがまた素敵なんですけどねー」
一方的な会話の何が楽しいのかわかりかねるが、新橋という女子社員は、やたら嬉しそうに言葉を弾ませる。
「新橋ー、社長狙っても駄目だよー。社長は仕事以外に興味ないからねー。な、社長?」
フォローとヤジの半々で、佐倉は僕と新橋を交互に見遣って答える。
「えぇ!あっ!もしかして社長って実はゲイ!?」
「ま、その疑惑は学生時代からあるよねー」
「マジですかー!?」
緩みきった表情のジトリとした視線が、両側から突き刺さる。