Thus, again <短>
「あんなに寂しがり屋だったのにな。なんだか今は、僕の方が弱いみたいで情けないよ」
「いいよ。弱くても。今度は私が守るから」
冗談混じりの返答だけれど、きっと彼女は僕を本当に守ってくれるのだろう。
「光輝、愛してるわ。
今までも、これからも、ずっと――」
「……ひかり」
不意打ちの、その深く重い言葉に、僕は言葉を失い、不覚にも泣いていた。
「あ、お兄ちゃんが泣いてるー」
「うるさい」
指をさしてからかう彼女を、僕は強引に抱き寄せる。
優しく抱き締めるつもりだったのに、気恥ずかしさを隠したい気持ちが混ざり、つい力が篭った。
「痛いよ……」
彼女の胸の中での訴えも聞けず、僕は力いっぱいで彼女を抱き締め続けた。
僕の独りよがりの愛は、結局今も変わっていないのかもしれない。
「僕はずっと、ひかりが僕に向ける愛情の正体を知るのが怖かったんだ」
「……え?」
彼女を腕の中に納めた安心感からか、いつのまにか零れ出す本音。
「君はあの時、僕しか知らなかった。愛情にいろんな種類があることも、知らなかっただろう?
だから、君がいろんな種類の愛を知った時に、それでも僕に、僕が求める愛を向けてくれるのかわからなかった。
君を幸せにするために、ちゃんと君を幸せにできる大人になるために、君から離れたけど、
本当は、その時が来て、君が僕から離れていくのを見るのが怖かったんだ。
だから僕は、君から離れた。逃げたんだ。本当、こんな男、弱くて情けなくて、嫌になるだろ」