〜君へ〜
「今日から新しく入る仲間を紹介します。」

(この時期に入社…??珍しいなぁ…)

「沖野クン入って」

-ガチャ-

「初めまして。沖野悟と申します。至らない所もございますが、よろしくお願いします。」



息の仕方がわからなくなった。



嘘…

どうして?



なんで?


本当に君なの?




苦しくて苦しくて、気付けば部署を飛び出し、女子更衣室に逃げてた…。


「悟…」


そうつぶやきながら自分の携帯を開く。

アドレス帳の中には一年も押す事のできなかった「沖野 悟」の字…。


悟は私の元彼。二年前、私が田舎カラ上京した時、毎日が不安だった私にいつも色んな事を教えてくれた。
出会いはコンビニだったなぁ…。雑誌の立ち読みコーナーに忘れた私の携帯を走って届けてきてくれたね。

懐かしい。

それからはずっと一緒だった。毎日が幸せで…


でも、幸せが壊れるのは早かった。
悟の転勤が決まって、まだ子供だった私は意地を張っちゃって…。

喧嘩別れ。


あれから何度も何度も「沖野 悟」のボタンを押そうとした。

でも、押せなかった。

そうしてる内に一年が過ぎ…、悟との別れと同時に私自身も今の職場に転職した。全てをリセットし、再スタートをするために。
もう悟の事は思い出す事も少なくなっていた。


なのに…


「悟…」

またつぶやいて、私は自分のロッカーにもたれかかった。


< 2 / 16 >

この作品をシェア

pagetop