輝く季節へ

運命と不信感

 
 去年の春。
好きな人ができた。

きっかけは携帯電話だった。
ある日の朝、メールが入っていた。
差出人は、不明。

聞くところによると、
前にこの電話番号を使っていた人らしい。
当時はあまり迷惑メールなどに
免疫がなかったため、
携帯を契約した時の
『番号の後に@(アットマーク)
が付いただけ』
のアドレスから変更する作業を
しなかったのだ。
こんな出会いもあるんだ、と思った。
運命を感じてしまった。


 それからというもの、
毎日メールを送り合った。
彼は隣県に住んでいる
一つ年上の高校三年生で、
バイクが趣味だと語る
わりとよく喋るタイプの少年だった。

名前は、石井俊介。


 一ヶ月ほど経った頃、
電話をするようにもなった。
楽しい会話だった。
私は顔も知らない彼に
好意を抱いてしまった。

その内彼が私の顔を見たいというので、
お互いに郵送でプリクラ交換をした。
石井さんは茶髪に両耳ピアスをしていて、
切れ長の目をした
イマドキな風貌の少年だった。
私の好みのタイプではなかったが、
がくんと肩を落とすということもなく、
「この人なんだ・・・。」
としみじみ思っていた。

石井さんは私が手紙を投函した次の日、
プリクラを見たと言って
早速メールをしてきた。
私の容姿を褒めてくれた。
気を良くした私は、多少オーバーに
彼のルックスを褒め返してみた。



 純粋に楽しいと思える相手だった。
よく知らないバイクの話をされても、
彼が熱弁をふるって喋ってくれることが
何よりも私にとって有意義だと思えた。

逆に彼が全く知らないであろう
私の学校の話をすると、
興味津々な態度を示してくれた。
私が(ここで笑って欲しいのよ)
と心に秘めて話をすると、
石井さんは不思議と
絶妙なタイミングでウケてくれた。


彼と知り合って約二ヶ月が過ぎた頃、
夜十時ごろに電話をしていて、
ある提案を持ちかけられた。




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