輝く季節へ
バーチャル
半年前の秋。
十月のことだった。
大した恋でもなかったのに、
私ははじめて恋で泣いた。
相手は六つ年上の二十三歳。
今回も、出会いの
きっかけは携帯電話。
放課後茶道部の休憩時間に、
何気なく鞄から携帯を取り出したら、
着信ランプが光っていた。
見覚えのない番号だったが、
登録忘れの可能性もあるので、
私は部室から出て電話に出てみた。
聞き覚えのない男性の声だったので、
間違えてはいないかと指摘してみた。
男性はすぐに謝って電話を切った。
その日の夜、
昼間の男性から電話がかかってきた。
今度は間違い電話ではなく、
私にかけてきたんだという。
会話が弾み、私たちはメル友になった。
男性の名前は、木村伸治。
それからというもの、私の自由時間は、
ほとんどメールのやり取りに当てられた。
休日は、一日二時間くらい電話をした。
話題はお互いの恋愛観に関することが
中心となっていて、
今までよりも刺激される相手だった。
石井さんの一件があったのにも関わらず、
私は性懲りもせずにのめり込んでいった。
生活の中に刺激が増えた錯覚をしていたし、
暇を感じることもなくなっていた。
この恋を保っていきたい、
などど思っていたのだ。
まさにバーチャル・リアリティの世界。
その世界に
私は心ごと浸ってしまっていた。