輝く季節へ
初恋ねぇ・・・。
すっごく懐かしい。
えっと、うん、そう。
伊藤直樹くん。

この恋の記録は
自作の歌詞でしか残っていなくて、
曖昧にしか思い出せない。

読み返すのが恥ずかしいと思ったのか、
恋愛日記は一ページ一ページ
破って捨ててしまったの。

二冊ほど書き終えたのに、
なんだか勿体無かったな。

その日記って、
世界にたった一つしかないじゃない?

世界中のただ一人が、
世界中のただ一人に向けて想いを綴った物で、
どうやったって
二度と複製することができないのよね。

 それなのに自ら燃やしてしまった。
他の誰にも、自分でさえ書けないあの日記。
そこに詰まっていたたくさんの思い出。

・・・まだ、少しは記憶に残ってるよ。
なんとか思い出せる。

******************


 ●月×日 晴れ

公園が見えるよ。犬もいる。
直樹君が歩いてる。
犬を見つけて嬉しそうに笑う顔、
多分ドキドキした。

必死に目で追っていた。
心から彼が好きだと思った。

直樹君は犬を追いかけて
公園の周囲を走ってる。
あぁ、私も犬になりたい・・・
なんて思ったりはしないか。

あーあ、追いかけたまま
どこかに行っちゃったよ。


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