カイラムの買い物
「どうしたの?ぼ・う・や」

 耳の中へ媚薬を注ぎ込むような囁き。

 思考が止まり、性欲だけが膨らんでいくような声だ。

 カイラムは必死に性欲に抵抗し、女主人から身体を振り解いて言った。

「もう、冗談は止めて下さい」

 振り向いて、女主人を見据える目は、金色の光を湛えていた。

 しかも、一色ではない。しばらく見つめていると七色に変化し、見る者を虜にした。

 珍しい妖眼の持ち主だった。

「ほら、その瞳」

「えー、またですかぁ」

「いいねぇ、上質この上ない妖眼。
どうだい、片方でいいから売ってくれないかねぇ。
ちゃんと見える義眼を付けるからさ」

 女主人の顔は微笑んでいるが、本気で言っていた。

「嫌です。
いくら不老薬の原料になるからって、自分の身体を売るつもりはないです。
だいたいなんです?
見える義眼なんて言うふざけた物は」

「いま西戎で流行ってる代用身体の一つだよ」

「代用身体?」
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