カイラムの買い物
「さて、一晩寝かせたし、定着用に特製ブレッドと洗浄用のノワルワルドも入った。
そろそろいい頃だね」

「えっ、何がです?」

 カイラムは、身構えて応えた。

「言ったろ、これも昨日の儀式の続きだって。
ほら、胃に手を当ててみな」

 言われた通りに、シャツをまくって右手を胃の辺りに当てた。

 何か、堅く冷たい感触がある。

 これが自分の胃なのかとぞくっとした。

「し、師匠……」

「ふん、何不安がってるのさ。
その凝りみたいなのが、あんたの身体に溜まっていた毒素さ」

「これがですか」

「さて、どうするかな。
昨日の様子だと吐き出させるのは後始末が大変だし……ふむ。
あの手を使うか」

 そう言って紅は席を立ち、カイラムの傍らに来た。

「いいかい、リラックスしてこっちをお向き、座ったままでいいから。
そう。どれ……」

 紅の右手がそっとカイラムの腹にあてがわれる。

 最初はひんやりしたが、すぐに暖かくなった。

「ふむ、最初にしては大きいな、やっぱり吐かせるのはきついか……」

 そう呟いて、紅はカイラムの目を見た。

 いつもは生意気な妖眼がすっかり脅えている。

 昨日のあれは結構ショックだったようだ。

 気丈で弁も立つが、まだ年端も行かぬ少年なのだ、無理も無い。

「いいかい、カイラム、ゆっくりと深呼吸するんだ」

「はい、師匠」
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