カイラムの買い物
「ちょ、ちょっとっ!」

 冗談で差し出した女主人は、本当に受け取ってしまったカイラムに、彼女らしくなく慌てた。

 こんな事でカイラムが死んだら、紅に何をされるか判ったものではない。

 絶対に多額の慰謝料を請求してくるに違いない。

 そんな女主人のことなど気にせず、カイラムは、初めて手にするその薬物を一つだけ手に残し、しげしげと妖眼で観察した。

「へーえ、これがセグロアオトカゲの雌の右目かぁ。
一体どう使うんだろ……」

「カ、カイラム」

「?何ですか……」

「あんた何ともないのかい?」

「何ともって……別に、何がです?」

「そいつは、触ってるだけで死に至る毒物なんだけどね」

「……やだなぁ、そう言うことは早く言って下さいよ。
危ないじゃないですか」

 呑気に言って、カイラムは薬籠の中の小袋へ、残りの一つと一緒に手にした右目を入れた。
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