カイラムの買い物
「危ないって言ったってねぇ。
普通あれだけ持ってりゃ死んでんだけどね」

「いやぁ、師匠と一緒に暮らしてると似たようなことが結構あるんで慣れちゃったんですよ」

「ほう、そんなものかね」

 女主人は、自分のことは棚に上げて感心した。

「それで、キハダ甲魚の背ビレと紅炎香は……」

「ああ、ちょっと待っておいで、上質の紅炎香が、昨日ダッホから来てね。
封薬庫に寝かせてあるから、取ってきてあげるよ。
キハダはカウンターの横にいくつかあるから選んでおきな」

「ありがとうございます」

「それは、あたしの台詞。
あんた客だろ」

「そういえばそうですね」

「まぁ、待ってな」

「はい」

 女主人はカウンターの裏から、地下の封薬庫へ入っていった。

 カイラムは、カウンター脇の棚の前に行き、その中段に陳列されている黒く干からびたキハダ甲魚の背ビレを見つけた。

 いくつかを手に取って、重さと香りを確かめる。
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