カイラムの買い物
 キハダの背ビレは昔から滋養強壮と整腸作用の生薬として親しまれてきた薬材だ。

 しかし、薬法師によって、キハダ甲魚の背ビレは充分剣呑な代物と化す。

 薬法師が一定の処方によって使用すると、強力な吸精薬。

 つまり、相手の精気を吸い尽くす魔薬となる。

 カイラムは、何気なく手に取って選んでいるが、この店に置いてある最高級の品は、素手で触るだけで精気を吸い取る。

「うーん、こっちの方が重くて艶があるな。
よし、こっちにしよう」

 カイラムは、もう一度選んだヒレの香りを嗅いで、確かめてから、それを薬籠に入れた。

「ほら、紅炎香だよ」

 女主人が封薬庫から戻ってきた。

 手には小さな壺を持っていた。

 その中に紅炎香が入っている。

「それじゃあ、それとこれで、お願いします」

 カイラムは薬籠をカウンターに置いて商談に入った。
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