カイラムの買い物
「ほいよ。
うーん、そうだねぇ、ざっと五万平均通貨《ジード》ってとこかね」

「えーっ、そんなにします?
今、平均通貨は安定して、高値ですから、三万で何とかなりません」

「なに言ってんだよ。
三万だって?
そんなんで売ったら、こっちは商売あがったりだよ。
まけて四万八千だね」

「でも、僕の情報が正しければ、この紅炎香は、市場卸値の四割で入荷したはずです。
それに新しい流通経路の獲得で輸入価格を抑えたばかりですよね。
それなのに小売りに反映させないなんて暴利ですよ。
三万五千でどうです?」

「いったいどこからそんな話を仕入れるんだろうね。
四万二千、新しい流通経路の獲得には結構先行投資してるんでね。
小売りに反映できるのは当分先さ。
これ以上はまからないよ」

「うーん、ちょっと情報が早すぎたか……四万二千ね……」

 カイラムは素早く計算した。

 実はこの店の品のほとんどの最新仕入れ値を知っていた。

 薬物の流通に関して百戦錬磨の女主人相手に値引き交渉に出るのである。

 このくらい知っておかないと相手にされない。

 その情報からだと手にした品は二万から三万平均通貨といったところだ。

 しかし、薬物の流通は原価以外にも金が掛かる。

 特に、ポクン・ポーラーの様な一流の品を合法非合法に関わらず売買する店ではなおさらである。

 その辺の含みを考えると四万二千はいい感じだった。

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