CHIME
はっと透は我に返る。


歩き去ろうとしていた泉を慌てて追った。


「おい、泉!」


その切羽詰まった声に泉は振り向く。


「いつのまにあんな事調べたんだ!?いくら警察に知り合いいるからって、捜査状況教えてもらえるはずなんかないだろ。
それにボタンなんて、なんで見てきた事のよーに現場の状況とか細かい事知ってんだ?」


泉は一瞬それが何の事だか分からないと言ったふうにきょとんとした顔をして見せた。


そしてそれはすぐわずかな苦笑に変わる。


「あれ、本気にしてたのか?」


泉の言葉に今度は透がア然となった。


「ボタンが見つかったのは本当だ。
もみ合った時に引き千切られたんだろうな。
けど髪は嘘だ。
殺された現場は屋外なんだから、そう都合よく落ちていてはくれないさ」


「え…だって」


泉はふと目を外した。


「先輩の自転車からルミノール反応が出たと先ほど連絡があった。
血液型が後藤のものと一致したとな。
皮膚の話は、あながち嘘じゃない。
後藤の爪から見つかっている。
結果はこれからだけどな。
証拠が完全に揃っていると言う訳ではないが、彼らが犯人だと言う事はほぼ確定だ。
何しろ僕の前であれだけ取り乱してくれたんだ。あれで違かったら詐欺だな」


透はぱっと顔を輝かせた。泉に思わず飛びつく。


「サンキュー泉!」


泉は驚いた様に透を引っぺがした。


「これであいつの…後藤の仇が討てた」


泉が振り返る。透はにこっと笑った。
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