CHIME
「まだお互い名前ちゃんと言ってなかったな。俺の名は……朝霞透」


泉も戸惑いながらも答える。


「僕は…泉。……泉…多綺」


わずかに笑ったのは一瞬。


すぐに多綺の足は歩き出した。


「多綺!」


昇降口の辺りまで来た時に、再び透は声をかける。

「…?」


泉は振り向いて眉にしわを寄せた。


その顔はまだ何かあるのかと言いたげである。


でも、もう無表情ではない。


「あのさっ、後藤死んじゃっただろ。俺また友達が少なくなって。…その」


透は顔を上げた。


「俺を…一人にするのか?」


多綺は驚いたような顔で透を見る。
透の顔は、今にも泣きそうで。


溜め息を一つ。


口の端を小さく上げ、呟いた。


「冗談だろ」


透の顔が輝く。


再び歩き始めた多綺を透は追い駆けた。





―――それから半年。
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