CHIME
一時間目
 HRが終わると、一年は入学式しかする事がなく、すぐに帰される事になる。


透は泉という奴の方をちらちら見ながら、いつも通り後藤達と騒いでいた。


しばらくすると3年らしき男子達が、泉を呼んだ。


泉は読んでいた本を机に置くと、黙って立ち上がり、その男達についていく。


透は、後藤達が呼び止めるのも構わず、泉と上級生、三人が歩いてい行った体育館裏に向かった。


透が体育館裏をそっと覗いた時は、既に事は始まっていた。


「…な…だよ」


ぼそぼそと話し声が聞こえ、それに対しただ無言が流れる。


「目立ち過ぎなんだよ」


「いい気になってんじゃねえよ」


「…て」


どうやら中学生特有の絡みの様だった。


 早い話がリンチである。


 そして泉は早くもそのターゲットに選ばれてしまったようだった。


透は少し様子を見る事にする。


「何とか言ったらどうなんだ?え!?」


途端に鈍い音がして、透は思わず慌てて飛び出した。


「!!?」


上級生は一瞬息を呑んだような顔になり、目の前にいる透の姿を認めると途端に今の今までのニヤついたふざけた顔になる。


「コイツ、確か朝霞とかいう奴じゃねぇか?」


そんな奴等の言葉に目もくれずに、透は泉を見る。


赤くなった頬を手で拭っている所を見る 限り、殴られたのは確かのようだ。


―――…こんな奴等に俺が手加減しなくちゃならない義理はない。


「コイツも生意気なんだよな。ガキの時からよぉ、運動や喧嘩は妙に強いって話だぜ」


「でもま、3対1じゃそうもいかねぇだろう」


…不快な笑いとはこういうのを言うのだろう。


 男達はにやりと笑う。


「…つー訳でよ。朝霞、ちょーっと遊んでくんねぇか?」
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