CHIME
放課後
「せーのっ!!」


クラスの男子一同の声で、透の上に男子生徒の山が出来る。


苦しげなうめき声を上げ、多綺に助けを求め手を伸ばす透を見て山口が呟いた。


「いーのか泉。助けなくて。あいつ、死にかけてるぞ」


多綺は読んでいた本から顔を上げ、透を見る。


少しの沈黙。


いつもの表情の奥に呆れた光が宿ったのを感じ、透は助けてもらう事を断念した。


「…いい薬だろう」


―――――…やっぱり。


ぽつりと言うと多綺は再び本に目を戻した。


クラス全員がにやりと笑う。


「お許しが出たな」


視線を透に戻し、一筋の汗を流しつつ小さく苦笑する山口の一言と同時に、男子達の山は更に大きさを増した。


透の叫び声が響く。


そして教室は静まり返り、山口は一人十字を切った。


――――――アーメン。
< 20 / 21 >

この作品をシェア

pagetop