CHIME
本当は寂しかったのかもしれない。


透はふと思う。


多綺に一人にしないでくれと言った時、透はあの瞬間に自分がどんな顔をしていたのか知っている。


そう、寂しかったんだ。


これ以上誰かを失うのが恐くて。


あのまま多綺と今まで通りになりたくなかった。


もっといろいろ知りたかった。


そう、ダチになりたいと思ったんだ。


校長は、あれから一ヶ月もしないうちに辞めて行った。


高褄親子は、子供はともかく父親の方は大人しく判決を受け入れたという。


後藤の仇は討った。


だけどやりきれない気持ちが透に残る。


自分の欲の為だけに、自分の存在意義の為だけに、誰かを傷つけ他人を不幸にし、時には殺す事が出来る人間。


そんな人間が、いるんだと知った。


――――だけど、それでも…。


「……透?」


多綺が透の顔を覗き込む。


透は我に返り、ふと微笑んだ。


考え込んでいる自分に苦笑し、寂しがっている自分に微笑む。


大丈夫。もう失ったりはしない。


窓を外を見ると、校庭の木の葉はもうほとんど落ちていた。


もうすぐ冬が来る。





僕達は歩いていく。


流れ続けるこの時間の中で。


あまりにも激しい波だけど、飲まれるなんて嫌だから。





俺達はもっと大きくなる。


どんな怒りや悲しみにも、笑って立ち向かって行けるように…。


―――…鞄を抱え歩き出した俺達に、放課後を告げる鐘だけが強く響いていた。
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