CHIME
 そして案の定。


透と泉は放課後、校長室に呼び出される。


校長は、透と泉を舐めるように見た後、小さく口の端を上げた。


どうしてもこの校長だけは、透は好きになれなかった。


「………で」


校長専用の机に腕で頬杖をつきながら、校長は透と泉を見上げた。


「…この始末はどうとるつもりかね。君達が殴った相手はPTA会長の息子さんであり、何よりも議員の高褄先生の息子さんでもあるんだぞ?…それなりの責任は取らねばならないな」


一瞬、殴りそうになった手を何とか押し止め、右手を左手で押さえつける。


「責任、ね」


ぽつりと呟いたのは、泉だ。透は驚いて泉を見る。


 彼の声をちゃんと聞いたのは、これが初めてかもしれない。


「教育を指導するの頂点にいるはずの方が、政治家に尻尾降って、贔屓するとは。世も末ですね、校長先生」


泉は校長を冷たく凝視して言った。


「責任は取ります。でも、彼は関係ありません。僕だけが責任を取ればそれで済む事」


泉は椅子からすくと立ち上がった。


 校長室のドアの前でくるりと振り返る。


「そーいうわけで僕はこれで失礼します」


言ってドアに手をかける。


「そうはいかないな」


校長はゆっくりと言った。


 泉が振り返り、透は一瞬腰を浮かす。


「君が責任を取る事はない。問題は朝霞君だ」


一瞬絶句した泉は校長を見つめる。


「高褄君を殴ったのは君だそうだな。泉君は高褄君に呼ばれただけと聞いている。この場合、責任を取るのは泉君ではなく朝霞君ではないのかね?」


透は言葉に詰まった。
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